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太陽光発電は元が取れない?営業試算を自分で検算した

2026年7月28日

太陽光発電の売電単価が最初の4年は24円、残りの6年は8.3円へ下がる二段階の仕組みを示す図

こんにちは。エネすけ運営者の「りょう」です。太陽光発電を調べていると、「10年で元が取れます」という説明と「元なんて取れなかった」という体験談が、同じくらいの数で出てきますよね。どちらも自信たっぷりに書かれているので、結局どっちを信じればいいのか分からなくなる。私もそうでした。

私は2026年4月に新築の一軒家に入居して、そのあとシャープ製パネル7.92kWと蓄電池7.7kWhを265万円・20年ローンで契約しました。施工は2026年8月18日に終わり、発電が始まったところです。

いま手元にあるのは、契約のときに受け取った1枚のシミュレーションだけです。年間206,604円お得、30年効果5,517,240円、売電単価14.58円/kWh、補助金0円。この紙を、経済産業省が公開している前提値と突き合わせて、自分で電卓を叩いて検算してみました。

先に結論を言うと、この試算の数字自体は、私が疑っていたほど盛られてはいませんでした。売電単価も発電量も制度どおりで、発電量にいたってはむしろ控えめです。ただ、平均でならされた数字には、営業さんが説明してくれなかった「時間の偏り」が隠れていました。この記事では、その検算の過程をそのまま公開しつつ、あなたが自分の屋根と自分の検針票で回収年数を計算し直すための手順まで書きます。

  • 元が取れるかを決めるのは製品ではなく自家消費分の評価単価
  • 売電単価14.58円は二段階買取を10年の年数で単純に平均した値だった
  • 売電収入は5年目に約3分の1へ落ちるという時間の偏り
  • 自分の使用量と屋根条件で回収年数を出し直す6ステップ

元が取れるかは自家消費の単価で決まる

「太陽光発電は元が取れない」と言う人と「10年で回収できる」と言う人がいるのは、どちらかが嘘をついているからではありません。発電した電気を家で使った分を何円で評価するか、その前提を1つ変えるだけで、同じ設備の回収年数が10年にも14年にもなるからです。まずここを押さえないと、いくら比較サイトを読んでも答えは出ません。

太陽光発電の年間経済効果を求める計算式と、試算によって結果が大きく変わる5つの前提条件、年間発電量・自家消費率・自家消費の評価単価・売電単価・費用を示した図

太陽光の経済効果は、そんなに複雑な話ではありません。売った分の収入と、買わずに済んだ分の節約を足して、維持にかかるお金を引く。それだけです。式にすると次のようになります。

年間の経済効果 = 売電量(kWh)×売電単価 + 自家消費量(kWh)×買電単価 - 年間の運転維持費/単純回収年数 = 初期費用 ÷ 年間の経済効果

この式に入れる数字のうち、シミュレーションによって大きく動くのは次の5つです。逆に言えば、事業者の試算を見るときにチェックすべき箇所も、この5つに集約されます。

  • 年間発電量(設備利用率・日射量・屋根の方角と傾斜)
  • 自家消費率(何割を家で使い、何割を売るか)
  • 自家消費分をいくらで評価するか(買電単価)
  • 売電単価(2026年度は二段階なので、平均で見るか年ごとに見るか)
  • 何を費用に入れるか(運転維持費・パワコン交換・撤去費・ローン金利)

このうち売電単価は制度で決まっているので、事業者が動かせる余地はありません。動くのは自家消費側です。しかも2026年度の単価構造では、5〜10年目の売電が8.3円/kWhなのに対して、電気を買う単価は東京電力の従量電灯第3段階で40.49円/kWh+再エネ賦課金4.18円/kWh=44.67円/kWh。

1kWhを売るより家で使うほうが5倍以上の価値があるという構造です。2019年以前の42円といった高いFIT単価の時代とは、前提が真逆になっています。

回収年数は10年にも14年にもなる

国の想定値をそのまま入れて計算すると単純回収は約14.2年、いまの検針票の単価で自家消費分を評価すると約10.1年になります。同じ設備・同じ発電量・同じ自家消費率30%でも、この1点だけで4年以上ずれます。

自家消費分の評価単価単純回収20年の税引前IRR
国(調達価格等算定委員会)の想定値27.31円/kWh約14.2年約3.4%
いまの検針票の限界単価(東京電力・従量電灯B 第3段階の例)44.67円/kWh約10.1年約7.4%

27.31円/kWhというのは、大手電力の直近10年間の家庭用電気料金単価に消費税10%を加味した値です。つまり過去10年の平均。いっぽう44.67円/kWhは、東京電力エナジーパートナーの従量電灯B第3段階40.49円/kWhに再エネ賦課金4.18円/kWhを足した値で、いま実際に第3段階まで電気を使っている東電エリアの世帯が、1kWh節約したときに浮く金額です。

前者は「電気料金は過去10年の平均に戻る」寄りの保守的な置き方、後者は「いまの高い水準が続く」という置き方になります。ここで大事な注意をひとつ。この44.67円/kWhは全国共通の数字ではありません。たとえばわが家のある関西だと、関西電力の従量電灯A第3段階は29.27円/kWh(2026年11月1日改定後)で、賦課金を足しても33.45円/kWh。

オール電化のはぴeタイムRならデイタイムが26.96〜29.59円/kWh(同)です。つまり関西電力エリアでは強気側の単価が国の想定値27.31円/kWhのすぐ近くまで下りてきて、ここで書いた4年の差はかなり縮んでしまいます。この記事の44.67円/kWhは東電エリアの一例として読んでください。あなたの回収年数を決めるのは、あなたの検針票の単価です。

ここが腑に落ちると、比較サイトの数字の見え方が変わります。「10年で元が取れる」という説明は、いまの高い電気料金がこの先も続くという前提とセットになっています。どちらが正しいかは誰にも分かりません。だからこそ、両方で計算して幅を持っておくのが現実的だと思います。

評価単価の確かめ方

受け取った試算の「電気代削減額(円)」を「自家消費量(kWh)」で割ってみてください。何円/kWhで評価しているかがそのまま出ます。40円台なら「いまの単価が続く」前提、27円前後なら国の想定に近い保守的な前提です。

もう1つ、意外と知られていない事実があります。国が24円/8.3円という価格を決めるとき、その根拠にしているのは「20年運転して税引前IRR3.2%が成り立つこと」です。調達期間は10年ですが、収支計算は20年で回している。

つまり国が想定している「元が取れる」の中身は、20年使い切って利回り3%台という絵であって、「10年で初期費用が戻る」ではありません。同じ制度から出発しても、国の想定値どおりなら回収は14年前後になります。(出典:経済産業省 調達価格等算定委員会『令和8年度以降の調達価格等に関する意見』(2026年2月5日))

この自家消費の単価、実際にわが家で計測した実測値が気になった方はこちら。
関連記事:太陽光の自家消費率とは?初日表示97%→初月実測37.6%の落とし穴

わが家の265万円の試算を検算した

結論から言うと、私が受け取った試算は、検算できた項目については予想に反して前提が妥当でした。売電単価は制度どおり、発電量はむしろ控えめ。ただし妥当だと確かめられたのはこの2つで、年間のお得額206,604円そのものは、太陽光と蓄電池の内訳が分からないため最後まで検証しきれませんでした。

総額の見方にも注意が要りますし、試算に入っていない費用は自分で足す必要があります。ここでは実物の数字をそのまま出して、1項目ずつ検算していきます。

自家消費率30%で単価45.6円と見る場合と、自家消費率70%で単価27.9円と見る場合という、まったく違う2つの前提でも、年間206,604円という同じお得額になってしまうことを示した比較図
項目提示値・契約内容
設置容量7.92kW(シャープ製パネル18枚)
蓄電池7.7kWh
費用265万円(20年ローン・団体信用生命保険付帯)
年間推定発電量8,645kWh
年間のお得額206,604円
30年効果5,517,240円
売電単価14.58円/kWh
補助金0円

先に正直に書いておくと、私は相見積もりを取っていません。1社即決です。このサイトでは「複数社から見積もりを取ってください」と書いている立場なのに、自分はやっていない。だからせめて、契約後でも数字だけは自分で検算しようと思ったのが、この記事のきっかけです。

検算の入口は、年間のお得額を発電量で割ることでした。206,604円 ÷ 8,645kWh = 23.90円/kWh。この試算が置いている1kWhあたりの価値のうち、売電分は14.58円/kWhと分かっているので、残りは自家消費分の評価で埋まっている計算になります。自家消費率をs、自家消費分の単価をeとして(1-s)×14.58+s×e=23.90を解くと、次の組み合わせが出てきます。

仮定した自家消費率整合する自家消費分の単価
20%61.2円/kWh
30%45.6円/kWh
50%33.2円/kWh
70%27.9円/kWh

ここで面白いことに気づきました。どちらの読み方をしても、この試算は成立してしまうんです。自家消費率30%(蓄電池なしの一般的な目安)と置けば自家消費分は45.6円/kWhで、東京電力の従量電灯第3段階40.49円+再エネ賦課金4.18円=44.67円/kWhにほぼ一致します。

いっぽう自家消費率70%(蓄電池ありの目安)と置けば27.9円/kWhで、こちらは国の想定値27.31円/kWhにほぼ一致する。

前者なら「いまの高い電気料金がこの先も続く」前提、後者なら「蓄電池で自家消費率を70%まで上げる」前提です。まったく別の話なのに、年間のお得額は同じ206,604円になる。だから営業さんに聞くべきは「この数字は本当ですか」ではなくて、「自家消費率を何%で置きましたか」なんですよね。ここが決まらないと、そもそも何を検証しているのか分かりません。

では、わが家は何年で元が取れるのか。単純に265万円 ÷ 206,604円 = 約12.8年ですが、この数字は蓄電池込みの効果を設備全体の費用で割ったもので、そのままでは意味を持ちません。自家消費率が確定していない以上、いま私が言えるのは「前提しだいで10年台前半から15年前後まで幅がある」というところまでです。1つの年数に丸められないこと自体が、この検算で分かったことでした。

売電単価14.58円の正体は二段階買取

私がいちばん怪しいと思っていたのが、この14.58円/kWhという半端な数字でした。結論、これは値引きでも独自試算でもなく、2026年度の制度そのものを10年でならした数字でした。電卓で追えます。

期間売電単価計算
1〜4年目24円/kWh24円 × 4年 = 96円
5〜10年目8.3円/kWh8.3円 × 6年 = 49.8円
10年の単純平均(年数)14.58円/kWh145.8円 ÷ 10年

2025年度の下半期(2025年10月認定分)から、住宅用太陽光のFITは単価が一定ではなく、前半と後半で変わる二段階方式になりました。これを初期投資支援スキームと呼びます。2026年度・2027年度も「24円/kWh(1〜4年目)・8.3円/kWh(5〜10年目)」で据え置く方向が委員会で示されています。(出典:資源エネルギー庁『買取価格・期間等(2026年度以降)』)

しかも国が掲げている住宅用の価格目標は、2026年度で14.69円/kWh。二段階買取を10年の年数で単純に平均した14.58円/kWhとほぼ並んでいます。この14.58円は各年の発電量で重みを付けた平均ではなく、年数で割っただけの計算上の値です。単価の水準としては、まったくおかしくないということです。ここは素直に「疑ってすみませんでした」でした。

単価そのものは正しい。問題は、平均値が「そのお金がいつ入るのか」を教えてくれないことにあります。

この売電単価14.58円/kWhがいつ口座へ振り込まれるかも、あわせて確認しておくと安心です。
関連記事:太陽光の売電はいつ振り込まれる?電力会社別の入金日と確認方法

年間発電量8,645kWhはむしろ控えめ

次に疑ったのが発電量です。ここも検算すると、国の想定より1割ほど控えめな置き方でした。割り算2回で分かります。8,645kWh ÷ 7.92kW = 1,091.5kWh/kW/年。これを8,760時間で割ると、設備利用率は12.46%になります。

出所設備利用率年間発電量の換算
わが家の試算12.46%1,091.5kWh/kW
国の想定値(2026・2027年度)13.7%1,200kWh/kW
直近の実績平均(2025年1〜8月)14.1%約1,235kWh/kW

日射量からも確かめてみました。年間発電量は「設置容量(kW)×年間日射量(kWh/㎡/年)×損失係数(0.80〜0.85)」で概算できます。わが家は関西なので大阪の年間日射量1,445kWh/㎡/年を当てると、7.92kW × 1,445 × 0.80〜0.85 = 約9,100〜9,700kWhという幅が出ます。試算の8,645kWhは、この幅よりさらに下です。

わが家の屋根はガルバリウム鋼板の片流れ・南向きで、穴あけ不要の工法で設置しました。方角としては有利な側の条件なので、そこに控えめな発電量を置いてあるのは安心材料でした。ただし設置が終わったのは2026年8月18日で、月単位の実測はまだ1件もありません。この予測が当たるかどうかは、これから毎月の実測で答え合わせしていくつもりです。

発電量の確かめ方

試算の年間発電量 ÷ 設置容量 ÷ 8,760 で設備利用率が出ます。国の想定13.7%を大きく上回っているなら根拠を確認してください。あわせて、屋根の方角・傾斜・影を反映しているか、NEDOの日射量データベースのどの地点・条件を使ったかも聞いておくと安心です。

関連記事:太陽光の発電量の目安は?1kWあたりの年間量と7.92kW実測

kW単価33.5万円は相場より高いのか

265万円 ÷ 7.92kW = 約33.5万円/kW。2025年設置(新築)の実勢平均28.9万円/kW、中央値29.4万円/kWと比べると、明らかに高い。……と一瞬あせったのですが、この割り算はそもそも成立していません。265万円には蓄電池7.7kWhの費用が丸ごと入っているからです。

そこで、相場から積み上げて比べ直してみました。太陽光は2025年設置・新築の平均28.9万円/kW、蓄電池は5〜9kWh帯のkWh単価約23万円/kWhを使います。

内訳相場から積み上げた目安
太陽光 7.92kW × 28.9万円/kW約229万円
蓄電池 7.7kWh × 約23万円/kWh約177万円
別々に買った場合の合計約406万円
実際のセット契約額265万円

こうして並べると、セットで265万円という価格は相場の積み上げを下回っています。ただしこの約406万円は、太陽光単体の平均と蓄電池単体の平均をそのまま足しただけの数字です。実際のセット契約ではハイブリッドパワコンのように太陽光と蓄電池で共用する機器がありますし、工事も1回で済みます。

単純加算はその二重計上のぶんだけ高く出るので、265万円が相場より安いと断定できるほどの比較にはなっていません。それでも、kW単価だけを見て高い安いを判断すると逆の結論になる、ということは分かりました。本当に安いかどうかは、太陽光と蓄電池の内訳を分けた見積もりを同じ条件で複数集めないと出せません。

太陽光単体の見積もりを比べるときは、見積総額 ÷ 容量でkW単価を出して、実勢の分布と突き合わせるのが有効です。2025年設置の中央値は29.42万円/kW、上位30%が25.63万円/kW、上位20%が22.22万円/kW。国の想定値25.5万円/kWは、実勢でいうと上位3割に入る水準にあたります。「25万円/kWで導入できる」という前提の試算は、それだけで有利側に振れているということです。

セット見積もりの落とし穴

太陽光と蓄電池をまとめた総額しか出てこない見積もりは、相場と比べようがありません。必ず太陽光の金額と蓄電池の金額を分けて出してもらってください。

30年効果に入らない維持費と金利

30年効果5,517,240円を30で割ると、年183,908円。年間206,604円より約11%低いので、何かしらの目減りが織り込まれている計算にはなります。ただし卒FIT後に売電単価が下がるだけでも平均はこのくらい落ちるので、経年劣化まで見ているのかどうかは、この平均値だけでは判別できません。

年ごとの発電量・買電単価・売電単価を並べた表をもらわないと、中身は分からないままです。ただし点検・パワコン交換・撤去費・ローン金利がどう扱われているかは、この紙からは読み取れません。ここは自分で足すしかない部分です。

費目一般的な目安わが家(7.92kW)に当てると
定期点検1回あたり約3.8万円・3〜5年に1回30年で7回なら約27万円
パワコン交換25〜60万円(業界団体ヒアリングでは38.4万円程度)寿命10〜15年なので30年なら1〜2回
撤去・処分住宅用4〜5kWで15〜30万円(1kWあたり約2〜3万円)わが家の7.92kWなら20万円前後
運転維持費(業界団体ヒアリング換算)約5,740円/kW/年年約4.5万円・20年で約91万円
ローン金利年1.5〜4.0%(銀行の太陽光ローンは変動2.0〜3.5%が主流)20年ローンなので利息分だけ回収は後ろへずれる
固定資産税10kW未満で架台に載せる屋根置きは原則非課税。屋根一体型は家屋の評価額に加算され課税屋根置きなので非課税の見込み
出力制御による売電機会損失10kW未満の住宅用は当面の間、対象外影響なし

金利の重さも数字にしておきます。ソーラーローンの相場は年1.5〜4.0%で、銀行・信用金庫の太陽光専用ローンは変動2.0〜3.5%が主流です。公開されている試算例では、130万円を15年で返す場合、金利1.5%と2.0%の総返済額の差が53,700円。

つまり金利0.5%の違いは、初期費用が5万円ほど増えたのと同じ扱いになります。回収年数に足すときは「総返済額 - 借入額」を初期費用に上乗せして計算し直すのが、いちばん分かりやすいと思います。

面白いのは、この維持費の想定が資料によってかなりぶれることです。国の想定値は3,000円/kW/年ですが、実際の定期報告データの平均は1,045円/kW/年。ところがこれはデータの88%が0円/kW/年だったためです。

その年に有償の点検や修理が発生しなかった家庭、メーカー保証の範囲で無償対応された家庭も0円として入ってくるので「点検を一度もしていない」とまでは言い切れません。ただ少なくとも、この1,045円/kW/年を将来の維持費の目安に使うのは危ういと思います。

逆に業界団体へのヒアリングを実額換算すると約5,740円/kW/年で、想定値の1.9倍になります。

もう1つ押さえておきたいのが期間です。国の算定における運転年数は20年で、その理由として「外壁や屋根の塗り替え等が想定されることから」と明記されています。30年効果というのは、国の算定より10年長い前提で描かれた絵です。

30年目まで動かすには、パネルが30年もつこと、パワコンを1〜2回交換すること、屋根の塗り替えや葺き替えのときにパネル脱着費が発生しないこと、卒FIT後の売電単価が想定どおりであることが全部必要になります。

撤去費についても補足を。廃棄等費用積立制度は10kW以上が対象で、住宅用(10kW未満)は対象外です。(出典:資源エネルギー庁『廃棄等費用積立ガイドライン』)つまり積立の仕組みがないので、撤去費は将来の自己負担になります。回収計算にこの15〜30万円が入っていることは、ほぼありません。

逆に、台風・落雷・雹・積雪といった自然災害による破損は、住宅の火災保険でカバーされる場合があります(屋根置きは建物付属設備として扱われることが多い)。ただし補償の範囲は契約内容によるので、加入している保険の証券を一度確認しておくと安心です。

30年効果を見せられたら「20年で切ったときの累計はいくらですか」と必ず聞いてください。国の算定と同じ土俵に乗せるための質問です。

関連記事:太陽光の固定資産税は屋根置き10kW未満の住宅用ならかかる?

売電収入は5年目に3分の1へ落ちる

2026年度に認定を受けると、売電単価は5年目に24円/kWhから8.3円/kWhへ切り替わります。8.3 ÷ 24 = 約35%なので、売電収入がおよそ3分の1に落ちるという計算です。10年間の合計額は平均単価で計算しても変わりません。違うのは、入ってくるタイミングだけです。

売電単価が1〜4年目の24円/kWhから5〜10年目の8.3円/kWhへ切り替わり、年間の売電収入が約3分の1に落ちる様子を、年ごとの棒グラフで示した図
エネすけ
エネすけ

ねえりょう、売電単価は制度どおりで合ってたんだよね?なのに減っちゃうの?

14.58円って、10年ぶんをならした平均なんです。合計は同じでも、実際に振り込まれる金額は年によって全然ちがうみたいですよ。

りょう
りょう
エネすけ
エネすけ

え、平均なのに?どういうことなの?

うちの数字で年ごとに並べ直してみたので、一緒に見てみましょう。

りょう
りょう

わが家の数字で具体的に見てみます。年間発電量8,645kWhのうち、自家消費率30%と置けば余剰は70%で約6,051kWh。これに単価を掛けると、1〜4年目の売電は年145,236円、5〜10年目は年50,227円になります。差は年約9.5万円です。

年二段階(実際)の年間収支平均14.58円で計算した年間収支累計の差
1年目263,629円206,624円+57,005円
4年目263,629円206,624円+228,021円
5年目168,621円206,624円+190,017円
10年目168,621円206,624円0円
11年目178,908円178,908円0円

この表の読み方はこうです。4年目の時点では、実際のほうが平均計算より約22.8万円多く回収できています。ところが5年目以降は、毎年3.8万円ずつ「平均より少ない年」が続き、10年目でちょうど帳尻が合う。平均単価は、前半を過小に、後半を過大に見せるという性質を持っているわけです。

意外だったのは、回収年数そのものへの影響はむしろ有利側だったことです。キャッシュが前倒しで入るぶん、現在価値では二段階のほうが得になります。1kWあたりのモデルで比べると、平均単価で平準化した場合の20年IRRが約7.0%なのに対し、実際の二段階だと約7.4%。単純回収年数はどちらも約10.1年でほとんど変わりません。

つまり「5年目に売電が減った、話が違う」と感じるのは、試算が間違っているからではありません。家計の体感と、平均でならされた数字のズレです。ここを知らずに契約すると、5年目にいちばん嫌な気持ちになります。

契約前に聞くべきこと

年ごとのキャッシュフロー表を出してもらってください。1〜4年目の売電収入と5〜10年目の売電収入が別々に書かれているかどうかが、その試算の誠実さの分かれ目になります。平均単価だけの説明で終わっているなら、自分で年ごとに割り直しましょう。

卒FIT後の売電単価は9〜10円が実勢

11年目以降、いわゆる卒FIT後の売電単価は9〜10円/kWh程度が実勢です。国の想定値は10.0円/kWh、実際に確認できる小売電気事業者の買取メニューは平均10.0円/kWh・中央値9.5円/kWhでした。

ここで順序に注目してください。1〜4年目が24円、5〜10年目が8.3円、11年目以降が9〜10円。つまり5〜10年目が、10年間で最も収入の薄い期間になり、11年目でわずかに戻るという形です。平均単価14.58円で説明されると、この順序はまったく見えません。

エリア別に見ると単価の幅はけっこう大きいのですが、高い側の単価は無条件で使えるとは限りません。国の資料でも「10円/kWh水準以上のメニューは、その小売電気事業者による電気供給とのセット販売や、蓄電池併設等の条件付きであることが比較的多い」と注意が促されています。表を見るときは、その前提で高い側を眺めてください。

エリア高いほうのメニュー(電気とのセット契約や蓄電池併設などの条件付きが多い)低いほうのメニュー(大手電力の標準帯は概ね7〜9円)
北海道15円/kWh8円/kWh
東京14.6円/kWh8.5円/kWh
関西12円/kWh8円/kWh
九州12円/kWh7円/kWh

さらに押さえておきたいのが契約の性質です。卒FIT後は原則として単年度契約で、単価は毎年見直されます。10年間ずっと同じ単価が保証されるFITとは、そもそも性質が違うということです。10年後の条件を今の数字で固定して計算すると、そこにもズレが生まれます。

だから11年目以降の収支を支えるのは、売電ではなく自家消費になります。買電が44.67円/kWh、売電が9.5円/kWhだとすると、卒FIT後は1kWhを家で使う価値が、売る価値の約4.7倍。蓄電池やエコキュートの昼間沸き上げが検討されるのは、この構造があるからです。

正直に書くと、私が契約前にいちばん詰め切れていないのがこの部分です。「今思うと、卒FIT後まで考えたらどうなんだろう」という疑問は、契約した今も残っています。ここはこれからの実測データで、自分の家の答えを出していくしかないと思っています。

元が取れない条件は北向きと日中不在

元が取れなかった家には、だいたい共通点があります。屋根が北向きや影がかかる条件で発電量そのものが落ちる家と、日中に誰もいなくて自家消費率が上がらない家。この2つが重なると、5年目以降は8.3円/kWhでしか処理できない余剰ばかりが増えてしまいます。

南向きの屋根で日中在宅の家と、北向きや影ありの屋根で日中不在の家とで、太陽光発電の経済効果がどれだけ変わるかを比較した図。屋根の方角別の発電量比率、南100%・南東南西95%・東西85%・北62%も示す
エネすけ
エネすけ

屋根の向きでそんなに変わるものなの?ぼくは水の中にいるからピンとこないや。

私も家を建てるまで意識していなかったんですが、方角と日中の過ごし方で、同じ設備でも結果がけっこう変わるみたいですよ。順番に見ていきましょう。

りょう
りょう

まず方角です。真南を100%としたときの、おおよその発電量の比率は次のとおりです。

屋根の方角発電量の比率(真南=100%)
南100%
南東・南西95%前後
東・西85%前後(南面比で12〜15%減)
北約62%

北向きだと発電量が4割近く落ちるので、同じ金額を払っても年間の経済効果はおおむねその分だけ小さくなります。厳密には、発電が減れば余剰も減って自家消費率のほうは上がりやすいので、目減りが発電量の減り方よりいくらか小さく出ることもあります。それでも効き方の大きい項目であることは変わりません。

東西に振り分けて載せるケースは南面より1割強落ちますが、朝夕の発電が伸びるぶん自家消費に乗りやすいという特徴があります。傾斜角は南向きなら30度前後、東西向きなら15〜25度が目安とされています。わが家は南向き片流れで比率100%の側だったので、契約前にいちばん先に確認して安心した項目がここでした。

逆に言えば、この1点で結論が変わり得るということでもあります。

怖いのは影です。パネルの一部に影がかかるだけで出力が半減することがあります。樹木・隣家・アンテナ・煙突などが対象で、日射量データベースの計算にはこの影が入っていません。

影が落ちる屋根では、試算の年間発電量をそのまま信用できないということです。北海道や東北の積雪地域も、冬季に発電がほぼゼロになる期間が生じます。わが家は影になるものが無いことを図面の段階で確認しましたが、これは運が良かった側だと思っています。

もう一方の軸が自家消費率です。蓄電池なしの一般家庭は約30%が目安で、国の想定値も自家消費率30%(余剰売電比率70%)。実績データを見ると平均で約35%、中央値で約39%なので、想定より少し高めに出ています。

ただしこれは平均の話で、日中に誰もいない共働き世帯・電気使用量そのものが少ない世帯では下がります。わが家はオール電化なので、昼に電気を使う手段があるぶん自家消費率は高めに出るはずです。稼働初日のモニタでは当日の自家消費率が97%でしたが、1日だけの数字なので月単位の実測はこれからです。

ガス併用の家も要注意です。給湯や調理が電気でないぶん電気使用量が小さくなるので、浮かせられる買電単価が第1段階(29.80円/kWh)寄りになります。自家消費1kWhの価値そのものが下がるので、同じ発電量でも経済効果が小さくなります。

屋根に対して容量を載せすぎた場合も同じで、余剰が増えて5年目以降の低単価にさらされる比率が上がります。オール電化かガス併用かで、同じ設備を載せても結論が変わるということです。

経済性が出にくい条件

次のどれかに当てはまる家は、回収年数が伸びやすくなります。

  • 屋根が北向き・影がかかる・面積が小さい
  • 積雪地域で冬季の発電が落ちる
  • 日中不在で電気使用量も少ない
  • ガス併用で電気の使用量が小さい
  • 容量が家の消費量に対して過大
  • 築年数が古く屋根の補強や葺き替えが近い
  • 実勢中央値29.42万円/kWを大きく超えるkW単価で契約した
  • ローン金利が高い
  • 近いうちに住み替えや売却の予定がある

屋根とも生活パターンとも関係なく元が取れなくなる要因が、もう1つあります。相場より高い価格で契約してしまうことです。訪問販売で「安く契約できるのはあと2件」などと言われ、約300万円で契約してしまったという相談事例が国民生活センターに報告されています。

設置したあとの注意点にも触れておきます。前提として、点検そのものは必要です。2017年施行の改正FIT法で保守点検の対象が50kW未満(住宅用を含む)まで広がり、事業計画策定ガイドラインでも適切に点検・保守を行って発電量の維持に努めることが求められています。頻度の目安は50kW未満で4年に1回。つまり「点検は要る」と「いま目の前に来た業者に頼む必要がある」は別の話です。

「太陽光パネルの点検が法律で義務化された」と説明して洗浄やコーティングを契約させる点検商法の相談件数は、2017年度の57件から2024年度は613件へ、7年で約11倍に増えています。80歳代の女性がドローン点検のあとに約40万円の契約をした、という事例も公表されています。(出典:国民生活センター『太陽光発電システムの点検商法が急増!』(2025年6月4日))

その場で契約しない

特定商取引法の訪問販売に該当する場合、契約書面を受け取った日を含む8日間はクーリング・オフができます。書面を受け取っていなければ、いつでもできます。点検やメンテナンスの契約もその場で決めず、複数社から見積もりを取ってください。不安なときは消費者ホットライン188へ相談できます。

わが家の条件も書いておきます。屋根はガルバリウム鋼板の片流れ・南向きで、影になるものはありません。オール電化(パナソニックのエコキュート+IH)なので、昼に電気を使う手段もあります。

導入前の電気代は2025年の実測で年190,766円、月平均約15,900円、冬ピークは2025年1月の704kWh・25,454円でした。条件としては、かなり有利な側です。だからこそ、条件の違う家に私の数字をそのまま当てはめることはできません。

自分の数字でシミュレーションし直す

ここまで読んで分かったと思いますが、他人の試算をいくら眺めても、あなたの家の答えは出ません。自分の屋根と自分の検針票で組み直せば、30分ほどで自分の回収年数の「幅」が出ます。ポイントは1つの答えを出そうとしないこと、そして平均単価で割り算するのではなく年ごとに足し上げることです。

検針票と見積書だけで自分の回収年数を計算し直すための6つの手順、年間発電量を出す・自家消費率を決める・単価を2通りで置く・売電収入を年ごとに置く・費用を引く・累計が初期費用を超える年を探す、を示した手順の図

必要なのは、電卓と直近の検針票(電力量料金の単価が分かるもの)、そして事業者からもらった見積書だけです。表計算ソフトが使えるなら、年ごとに1行ずつ並べていくと5年目の落差が目で見えるようになります。

ちなみにこれから書く手順は、このサイトに置いている回収年数シミュレーターにも同じ計算ロジックで組み込んでいます。私の本業はシステム開発なので、計算の中身と使った公開統計は自分で確かめられるようにしてあります。

発電量と自家消費率を置く6ステップ

順番はこの6つです。3番で強気と保守の2通りを置くのがいちばん大事なところで、ここを1つに決め打ちすると、他人の試算と同じ落とし穴にはまります。

  • 年間発電量を出す:設置容量(kW)×年間日射量(kWh/㎡/年)×損失係数(0.80〜0.85)。ざっくりなら設置容量×1,000〜1,200kWh。国の想定は1,200kWh/kW(設備利用率13.7%)、実績平均は約1,235kWh/kW(14.1%)
  • 自家消費率を決める:蓄電池なしなら30%前後が目安。日中在宅・オール電化なら高め、日中不在なら低め
  • 自家消費分の単価を2通りで置く:強気=いまの検針票の電力量料金の最上位段階+再エネ賦課金4.18円/保守=国の想定値27.31円/kWh
  • 売電収入を年ごとに置く:1〜4年目=発電量×(1-自家消費率)×24円、5〜10年目=同×8.3円、11年目以降=同×9〜10円
  • 費用を引く:運転維持費(3,000円/kW/年か、点検+パワコン交換の実額)。ローンなら「総返済額 - 借入額」を初期費用に上乗せする
  • 累計が初期費用を超える年を探す:平均単価で割るのではなく、年ごとに足し上げる

1番の年間日射量は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベース閲覧システムで、屋根の方位と傾斜角を指定すれば取得できます。現行版はMETPV-20で、2010〜2018年の気象データをもとに全国835地点をカバーしています。地域別のおおよその目安は、那覇1,548/大阪1,445/東京1,438/福岡1,413/札幌1,278(kWh/㎡/年)といったところです。

損失係数がなぜ0.80〜0.85なのかも、内訳を知っておくと納得できます。パワコンの変換ロスが5〜8%、パネル温度が上がることによる温度ロスが年平均約5%(夏は10〜20%)、配線抵抗や汚れ・部分的な影で3〜5%、経年劣化が初年度約2%+年0.4%程度。年間平均で15〜20%の複合ロスになります。

新型のN型セルと最新のパワコンの組み合わせなら0.85前後、旧型のP型PERCと初期のパワコンなら0.78前後が目安とされています。私は自分の家の数字を出すとき、この係数を1つに決め打ちせず0.80と0.85の両方で計算して、幅として持っておくようにしました。

6番の「年ごとに足し上げる」は面倒に見えますが、ここを省くと5年目の落差が絶対に見えません。逆に言えば、年ごとに足し上げた表を1枚作るだけで、営業さんの説明の何が省略されていたかが全部見えます。

前提を1つ動かすと回収年数は4年ずれる

前の章で見たAとBの差、つまり自家消費分を27.31円/kWhで見るか44.67円/kWhで見るかによる約4年のずれを基準線にして、ほかの前提はそこからどれだけ動かせるのかを並べてみます。すべて1kWあたり・20年運転での計算です。先に結論を言うと、単価以外の前提はどれも1〜2年の幅にしか効きません。

ケース変えた前提単純回収20年IRR20年純益(1kWあたり)
A 国の想定値どおり自家消費 27.31円/kWh約14.2年約3.4%+約88,000円
B 自家消費をいまの限界単価で評価自家消費 44.67円/kWh約10.1年約7.4%+約213,000円
C B+維持費を業界団体実勢に5,740円/kW/年約11.6年約5.7%+約158,000円
D B+システム費用を実勢平均に28.9万円/kW約11.7年約5.7%+約179,000円
E B+発電量を控えめに設備利用率12.46%約11.4年約5.9%+約165,000円
F B+経年劣化を織り込む発電量が毎年0.5%減約10.4年約6.9%+約190,000円

C〜Fはすべて、Bを起点に1項目だけ悪いほうへ振ったケースです。Bからの伸びを大きい順に並べると、システム費用(D・+1.6年)>運転維持費(C・+1.5年)>発電量(E・+1.3年)>経年劣化(F・+0.3年)。上位3つを全部悪いほうに寄せて、ようやく単価1つの差(約4年)に並ぶという重みづけです。

とはいえ1〜2年は無視できる差ではないので、私は3つを性質で分けて考えることにしました。システム費用は契約した瞬間に確定するので、見積もり段階でしか動かせません。運転維持費は、パワコン交換をいつ・いくらで見込むかがそのまま出るので、後から自分で調整できる余地があります。発電量は屋根の条件でほぼ決まってしまう部分で、Eの設備利用率12.46%は、実は私の試算に実際に置かれていた値です。

意外なのが経年劣化です。年0.5%の劣化を織り込んでも、回収は0.3年しか伸びません。「パネルは劣化するから元が取れない」という話は、数字で見るとインパクトが小さいということになります。心配する順番としては、かなり後ろでいいと思います。

動かして確かめるべきは劣化率ではなく、自家消費分の評価単価・システム費用・運転維持費の3つです。

ちなみに、世の中に流通している「10年前後で回収できる」という結論も、置いている前提はまったく違います。同じ数字が、まるで違う組み合わせから出てくるという例を並べておきます。

出所の性格容量・初期費用主な前提結論
一括見積もりサイトの試算6.12kW/134.0万円(21.9万円/kW)買電36.0円/kWh、売電15円/kWh(11年目以降9.0円)、4年ごと点検2万円、17年目パワコン交換20万円、年0.27%劣化9.09年で回収
工務店+専門家の厳しめ試算5kW/200万円(40万円/kW)電気代上昇率年3%、発電量低下年0.75%、自家消費率50%、パワコン交換11年目・22年目25年累計利益433万円・回収約10年
国(調達価格等算定委員会)の算定1kWあたり25.5万円設備利用率13.7%、自家消費率30%、自家消費便益27.31円/kWh、維持費3,000円/kW/年、運転年数20年20年で税引前IRR3.2%(単純回収は約14年)

一括見積もりサイトの試算にあるkW単価21.9万円は、2025年設置実績の上位20%(22.22万円/kW)よりさらに安い水準です。この価格で本当に契約できるかどうかが、結論を丸ごと左右します。工務店の試算はkW単価40万円と実勢中央値より高い代わりに、自家消費率50%・電気代年3%上昇という強気の前提で埋めている。結論の年数ではなく、前提を並べて初めて比較になるということです。

蓄電池の収支は太陽光と分けて出す

太陽光の回収年数と蓄電池の回収年数は、別々に計算しないと混ざります。蓄電池を入れると余剰売電が減るのでFIT収入そのものが減り、太陽光側の数字も変わってしまうからです。まとめて「何年で回収」と説明されたら、まずここを分けてもらってください。

蓄電池の経済効果は「昼の余剰を売らずに夜使う」ことで生まれます。得られる価値は買電単価から売電単価を引いた差額です。ただし充電と放電のたびに電気は目減りします。

リチウムイオン蓄電池の往復効率はカタログ値で90〜95%、パワコンの変換ロスまで含めた実運用では85〜90%程度が現実的とされているので、下の表はそのロスを引く前の上限的な差額だと思ってください。

2026年度の条件(買電を従量電灯第3段階+再エネ賦課金の44.67円/kWhとした場合)だと、こうなります。

期間買電単価売電単価1kWhあたりの価値
1〜4年目44.67円24円約20.7円
5〜10年目44.67円8.3円約36.4円
卒FIT後44.67円9.5円約35.2円

つまりFIT単価が高い最初の4年間は、蓄電池の経済メリットがいちばん小さいという順番になります。5年目以降に価値が大きくなる。二段階買取は、蓄電池をいつ入れるかという判断にも影響しているということです。自家消費率も、蓄電池なしで約30%のところが、蓄電池ありなら70〜80%まで引き上げられます。

価格の相場も押さえておきます。総額は約90〜300万円で、150万〜250万円が中心。kWh単価の平均は約17.2万円/kWhですが、容量が小さいほど割高になり、3〜5kWhで約33万円/kWh、5〜9kWhで約23万円/kWh、9〜13kWhで約19万円/kWh、13kWh以上で約15万円/kWhという分布です。

厳しい数字も出しておきます。4kWの太陽光+8kWhの蓄電池・初期費用240万円という条件の試算例では、新FIT(24円→8.3円・補助金なし)だと15年時点でまだ未回収で、15年累積純利益は▲507,920円。補助金58万円を使える非FITモデル(売電10円固定)でようやく約14.9年でした。蓄電池込みだと回収は15年前後まで伸びると見ておいたほうが現実的です。

私自身、ここは反省があります。契約時に受け取ったシミュレーションは太陽光と蓄電池がひとまとめで、年間206,604円のうち蓄電池がどれだけ効いているのかを、私は切り分けられていません。前のほうで「自家消費率30%でも70%でも数字が成立してしまう」と書いたのは、まさにこれが原因です。これからの実測で、自分で分解していくつもりです。

セット契約なら「太陽光だけの収支」と「蓄電池だけの収支」を分けた資料をお願いしてください。分けられない試算は、検証もできません。

関連記事:新築で見送った後悔かどうかを判断する3つの数字

関連記事:太陽光がシミュレーション通り発電しない?原因と検算の手順

回収できなくても選ぶ理由はあるか

回収年数だけで決めるなら、条件が悪い家は「導入しない」が正解になり得ます。ただ実際の判断には、金額に換算しにくい価値が確実に混ざっています。これを回収の計算に無理やり足し込むと話がぼやけるので、分けて評価したほうが後で「話が違う」となりにくいです。

回収年数の計算には入らないけれど、実際の判断材料になっている要素はこのあたりです。

  • 停電時の非常用電源(パワコンの自立運転機能で日中に一定の電力を使える。蓄電池があれば夜間も)
  • 災害時の備え(長期停電時の生活維持)
  • 電気料金の変動リスクへのヘッジ(自家消費できた分だけは値上がりの影響を受けにくくなる。夜間や悪天候の買電分は従来どおり影響を受ける)
  • ZEH・省エネ基準への適合(新築時の住宅性能表示や補助制度の要件になる場合がある)
  • CO2排出の削減
  • 東京都の設置義務化のように、そもそも選択の余地が小さいケース(義務を負うのは都内で年間2万㎡以上を供給する大手事業者側で、施主に直接かかる義務ではありません。屋根の条件しだいでは対象外にもなります)

私が契約した理由も、半分はここでした。中東情勢の影響もあって電気代は上がっていくだろうという予想があり、電気は毎日必ず使うものなので、外部環境で費用が大きく左右されるのが心理的にどうも落ち着かなかったんです。買う量を減らせば、高騰の影響もそのぶん小さくなる。地震などで電気が止まったときに最低限の電気を確保できる、というのも大きかったです。

契約してから意外だったのは、20年ローンに団体信用生命保険(団信)が付いていたことです。住宅ローンでは定番ですが、ソーラーローンにも付いているとは知りませんでした。万一のときはローン残債が保険で完済されて、設備は家族に残る。

「20年ローンは重い」という不安への、かなり大きな安心材料になりました。ただし付帯の有無や保障の範囲はローン商品によって違うので、契約書で必ず確認してください。ローンで検討している方は、金利だけでなく団信の有無も条件に入れて比べてみるといいと思います。

逆に「導入しない・遅らせる」も立派な選択肢です。買わなければ初期費用も撤去費も発生しません。電気料金プランの見直し、エコキュートなど高効率機器への更新、断熱改修といった「使う量を減らす」手段は、太陽光より初期費用が小さい場合があります。私自身、旧居は賃貸でプラン変更すらできませんでしたが、持ち家なら選べる手段はいくつもあります。

初期費用0円で導入する方法もあります。ただし「元が取れるか」という観点では、誰が売電収入と補助金を受け取るのかで話がまるごと変わります。

方式初期費用売電収入補助金
現金購入全額自己負担自分自分
ローン購入頭金のみ自分自分
リース0円(毎月定額のリース料)自分事業者側
PPA(電力販売契約)0円事業者事業者側

PPAは自家消費した分についても事業者に電気料金を支払う形になります。この単価は電力会社から買うより割安に設定されることが多い一方、契約期間中は固定だったり、既存設備の改修費が上乗せされたりすることもあるので、条件は商品ごとの確認が要ります。売電収入と補助金は原則として事業者のもの。

初期費用を負担しない代わりに、経済メリットの取り分も事業者と分け合う構造だという点は、契約前に知っておきたいところです。ほかにも買電単価の上乗せ、屋根工事や住宅売却の制約、契約満了後の所有権の扱いが確認事項になります。現金かローンで買えるなら経済メリットは自分で取れるので、私が20年ローンを選んだのもここでした。

ただし、待てば条件が良くなるとは限りません。2026年度・2027年度は24円/8.3円で据え置きの方向ですが、委員会では2029年度から「支援期間の短縮」(買取期間を10年より短くする)の適用開始を基本とする、という方向が示されています。制度は良くなるほうにも悪くなるほうにも動きます。

判断は必ず自分の条件で

この記事の数値はすべて、公開資料とわが家の見積もりをもとにした一般的な目安です。FIT単価・補助金・電気料金プランは年度で変わるので、正確な情報は経済産業省・自治体・電力会社の公式サイトで参照時点を確認してください。私は電気の資格を持たない一般施主です。契約や資金計画の最終的な判断は、複数社から見積もりを取ったうえで、必要に応じて専門家に相談し、ご自身の責任でお願いします。

太陽光発電が「元が取れない」か迷う人のよくある質問

2026年度に契約すると、売電単価は結局いくらになりますか?

住宅用(10kW未満)は二段階で、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです。10年でならすと14.58円/kWhになります。11年目以降の卒FIT後は9〜10円/kWh程度が実勢で、国の想定値は10.0円/kWh、買取メニューの中央値は9.5円/kWhでした。2027年度も同じ据え置きの方向が示されていますが、その先は状況が変わります。委員会では2029年度から「支援期間の短縮」(買取期間そのものを10年より短くする)の適用開始を基本とする方向が示されているので、待てば条件が良くなるとは限りません。契約前に経済産業省の最新資料で確認してください。

太陽光発電の回収年数の目安は何年ですか?

前提しだいで約10年〜約14年と幅が出ます。国の想定値そのままなら約14.2年、いまの検針票の限界単価で自家消費分を評価すると約10.1年です。システム費用を実勢平均の28.9万円/kWにすると1.6年ほど、運転維持費を業界団体ヒアリング水準にすると1.5年ほど伸びます。蓄電池も一緒に入れる場合は15年前後まで伸びる試算例もあるので、太陽光と蓄電池は分けて計算するのがおすすめです。なお11年目以降の収支を支えるのは売電ではなく自家消費なので、回収年数の後半部分は自家消費率をどこまで上げられるかでほぼ決まります。

営業の試算が有利側に振れているかどうかは、どこを見れば分かりますか?

割り算を3つやってみてください。1つ目は「年間発電量 ÷ 設置容量 ÷ 8,760」で設備利用率が出ます(国の想定は13.7%)。2つ目は「電気代削減額 ÷ 自家消費量」で自家消費分の評価単価が出ます(国の想定は27.31円/kWh)。3つ目は「見積総額 ÷ 容量」でkW単価が出ます(2025年設置の中央値は29.42万円/kW)。この3つが実勢からどれだけ離れているかで、前提の強気さが見えます。もう1つ、電気料金の上昇率を何%で置いているかも聞いてみてください。年3%といった上昇率が入っていると後半の経済効果が大きく膨らむので、上昇率0%にしたときの数字も出してもらうと、前提の強気さがはっきりします。

メンテナンス費用は回収計算に入れるべきですか?

入れておいたほうが安全です。国の想定値は3,000円/kW/年ですが、業界団体へのヒアリングを換算すると約5,740円/kW/年になります。定期点検は1回あたり約3.8万円で3〜5年に1回、パワコン交換は25〜60万円(寿命10〜15年)、撤去・処分は住宅用で15〜30万円が目安です。住宅用(10kW未満)は廃棄等費用積立制度の対象外なので、撤去費は将来の自己負担になる点も見ておいてください。税金については、10kW未満で架台に載せる屋根置きなら固定資産税は原則かかりませんが、パネルが屋根材を兼ねる屋根一体型は家屋の一部とみなされて評価額に加算されるので、設置形態によって扱いが変わります。

2026年度に使える補助金はありますか?

一般的な屋根置きの太陽光を単体で導入する場合、2026年度に全国一律で使える国の補助金はありません。ZEH補助金や「みらいエコ住宅2026事業」のような住宅まるごとの支援、リフォーム支援事業を経由する形になります。ただし窓・壁と一体になった建材一体型の太陽光には環境省の支援事業があるなど、設置形態しだいで国の制度が使えることもあるので、最新の公募情報は確認してください。自治体の補助制度は地域と年度予算しだいで、東京都は太陽光(既築)が3.75kW以下なら15万円/kW(上限45万円)・3.75kW超なら12万円/kW、蓄電池10万円/kWh(上限120万円/戸)に見直されました。予算枠・先着順・着工前申請などの条件があるので、補助金込みの金額を提示されたら、採択されなかったときの数字も必ず確認してください。

まとめ:元が取れるかは前提の置き方で決まる

エネすけ
エネすけ

けっきょく、太陽光って元は取れるの?取れないの?

それが「どっちもある」なんですよね。屋根と暮らし方と、契約する価格しだいでした。だから他人の試算じゃなくて、自分の数字で計算し直すのがいちばん早いと思います。

りょう
りょう

自宅で受け取った1枚のシミュレーションを検算してみて分かったのは、「営業の数字が嘘かどうか」はあまり本質ではない、ということでした。単価も発電量も制度どおりで、むしろ控えめだった。それでも、平均でならされた数字は時間の偏りを隠してしまいます。要点をまとめておきます。

太陽光発電の回収年数を左右する要点を1枚にまとめた図。自家消費分の評価単価で回収年数が約14.2年と約10.1年に分かれること、売電収入が5年目に約3分の1へ落ちること、元が取れにくい条件、経年劣化の影響は小さいこと、蓄電池の収支は分けて計算することを示す
  • 回収年数を最も左右するのは自家消費分の評価単価。27.31円/kWhで見るか44.67円/kWhで見るかだけで、約14.2年と約10.1年に分かれる
  • 売電単価14.58円/kWhは二段階買取(24円×4年+8.3円×6年)を10年の年数で単純に平均した値で、制度どおりの数字
  • 売電収入は5年目に約3分の1へ落ちる。10年合計は同じでも、年ごとに並べないとこの落差は見えない
  • 元が取れにくいのは北向き・影あり・積雪、日中不在で使用量が少ない、容量が過大、相場より高いkW単価の契約
  • 経年劣化を年0.5%入れても回収は0.3年しか伸びない。心配する順番はかなり後ろでいい
  • 太陽光と蓄電池の収支は必ず分けて計算する。蓄電池込みだと回収は15年前後まで伸びる例もある

やることは意外とシンプルです。自分の検針票から電力量料金の最上位段階と再エネ賦課金を拾い、屋根の方角と傾斜で年間発電量を出し、自家消費率を置いて、売電を1〜4年目・5〜10年目・11年目以降の3段階で年ごとに足し上げる。その1枚の表があれば、どんな試算を見せられても自分で検算できます。

私は2026年8月18日に設置を終えたところで、月単位の発電の実測はまだ1件もありません。これから、この試算がどれだけ当たったのかを毎月の実測で答え合わせしていきます。数値はいずれも一般的な目安であり、制度や電気料金は年度で変わります。正確な情報は公式サイトでご確認のうえ、契約の最終判断は複数社の見積もりを取り、必要に応じて専門家にご相談ください。

20年ローンの月々の返済額と、その年の経済効果の差額だけを追った検算はこちらにまとめています。
関連記事:太陽光ローン20年はきつい?月々1.5万円の実契約で検算

関連記事:一軒家の太陽光発電のデメリット|自宅の屋根で検討した実例

関連記事:太陽光発電の維持費は20年総額いくら?実契約の内訳で計算

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  • この記事を書いた人

りょう / エネすけ運営者

関西の新築一軒家(オール電化)で、妻と子ども2人と暮らす一般の施主です。2026年8月に太陽光7.92kW+蓄電池7.7kWhを設置しました。導入前24ヶ月分の電気代実測をもとに、「太陽光は本当に元が取れるのか」を導入前後の比較で検証していきます。

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